経営管理ビザ要件の厳格化について
経営管理ビザとは
経営・管理ビザは、日本で会社を経営したり、管理者(取締役など)として事業運営に携わるための在留資格です。他の方が設立した会社で経営・管理業務に従事することもできますが、ご自身で会社を立ち上げ、日本で事業を展開していくケースも多く見られます。
こうしたケースでは、これまで資本金の準備、事業計画の策定、事業所の確保が審査の重要ポイントとされてきました。
しかし、2025年10月16日 に関係省令等が改正され、経営・管理ビザの 資本金・事業計画・雇用要件に大きな変更が加えられました。
参照:在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について
https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html
変更内容
| 変更前 | 変更後 | |
|---|---|---|
| 資本金 | 500万円以上 | 3000万円以上 |
| 学歴・職歴 | なし | 経営・管理経験3年以上又は経営管理・経営する事業分野の学位取得(修士相当以上) |
| 職員の雇用 |
なし (資本金500万円未満の場合は2名以上雇用必要) |
1人以上の常勤職員の雇用が必要 (資格:日本人、特別永住者、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者) |
| 日本語能力 | なし | 申請者か常勤職員(就労ビザ等で在留中の方でもよい)が相当程度の日本語能力を有する |
| 専門家の確認 | なし | 新規事業計画について経営の専門家の確認が必要(上場企業相当規模の場合を除く) |
資本金の額
これまで、経営・管理ビザの資本金要件は 500万円以上 とされてきました。しかし、この金額では比較的ハードルが低く、制度が悪用されるリスクが指摘されていたことから、今回の改正により 6倍の「3000万円以上」 へと大幅に引き上げられました。
ここでいう「3000万円」は、事業主体の形態によって次のように扱われます。
株式会社の場合:資本金額が3000万円以上であること
持分会社(合名・合資・合同会社)の場合:出資総額が3000万円以上であること
個人事業主の場合:事業所の賃料、従業員1年分の給与、設備投資など、事業運営に必要な初期費用の総額が3000万円以上であれば要件を満たす
つまり、「会社形態によって資本金の形が異なるため、どのように3000万円を確保するか」がポイントとなります。今回の改正により、事業の実態がより重視される方向へと進んでいると言えます。
常勤職員の雇用
これまでの経営管理ビザでは、「資本金500万円以上」または「常勤職員の雇用」のいずれかを満たせばよいとされていました。そのため、資本金要件を満たしている場合、常勤職員を雇わずに申請するケースも実務上見られました。ただし、経営管理ビザでは経営者本人が接客などの現場業務に従事することはできないため、レストランなど現場作業が不可欠な業種では、実質的に従業員の確保が必要でした。今回の改正後は、事業内容に関わらず、必ず「常勤職員1名の雇用」が必須要件となりました。
常勤職員として認められるのは、日本人・特別永住者・永住者・日本人や永住者の配偶者等・定住者のいずれかに該当する人です。また、形式的に「要件だから雇いました」というだけでは審査を通らない可能性があります。
今後の事業計画書では、
- 経営者が行う業務
- 常勤職員が担う業務
- 両者の業務量が十分に確保されていること
を具体的かつ説得力のある形で説明することが求められるでしょう。
日本語能力
これまでの経営管理ビザでは、経営者や従業員に対して日本語能力は原則として求められていませんでした。
ただし、通訳業務のように日本語が必須となる事業の場合には、事業が実際に成り立つことを示すため、結果として日本語力が必要とされるケースもありました。
ところが今回の改正により、事業内容に関係なく、申請者または常勤職員のいずれかが “一定以上の日本語能力” を持っていることが明確に要件として追加されました。
ここで注意したいのは、この「常勤職員」は、資本金要件に出てくる“永住者等に限る常勤職員”とは異なる点です。
改正後の日本語要件でいう常勤職員は、永住者に限定されず、就労ビザなど法別表第一の在留資格を持っていれば対象になります。
ただし、あくまで“常勤”であることが条件ですので、日本語が堪能な留学生がアルバイトで働いていても、この要件は満たしません。
「相当程度の日本語能力」とは?
今回求められる日本語力は、「日本語教育の参照枠」でいう B2レベル以上 とされています。
日本人や特別永住者を除き、次のいずれかに該当すれば、この基準を満たします。
- JLPT(日本語能力試験)N2以上
- BJTビジネス日本語能力テスト 400点以上
- 中長期在留者として20年以上日本に在留
- 日本の大学など高等教育機関を卒業している
- 日本の義務教育を修了し、高校を卒業している
学歴・職歴
変更前は、学歴や職歴に関する明確な要件はありませんでした。しかし、事業計画書の中で「事業を適切に遂行し、利益を生み出せること」を示す必要があるため、実際にはこれまでの経験を説明することが重要となっていました。
これに対し、改正後は新たに次のいずれかの要件を満たすことが必須となりました。
新たに追加された要件
① 経営管理または申請事業に必要な技術・知識に関する学位を保有していること(博士・修士・専門職学位、外国の学位も可)
または
② 事業の経営または管理に関する3年以上の実務経験があること(「特定活動」による起業準備期間も含む)
立証で注意すべきポイント
①の学位要件は、学位証明書を提出すれば比較的スムーズに立証できます。
一方で、②の「3年以上の経営・管理経験」を選択する場合は注意が必要です。
経験そのものがあっても、それを証明できなければ要件を満たしたことになりません。
実務経験の内容・期間を証明するためには、原則として過去の勤務先の協力(在職証明、業務内容証明など)が必要です。
そのため、
- 既に会社が廃業している
- 会社が証明書類の発行に協力してくれない
といったケースでは、経験が3年以上あっても立証が困難になり得ます。
事業計画書
事業計画書は、申請者がどのような事業を行おうとしているのか、実際に事業を遂行できるのか、利益を上げることが可能か、日本で行う必要性があるのか、具体的な数値は示されているか、などを示す書類です。そのため、内容の整合性や説得力が非常に重要です。従来は、これらの判断は最終的に入国管理局の審査官が行うものであり、事前に経営の専門家による作成やチェックを受ける必要はありませんでした。
しかし、今回の改正により、事業計画の具体性や合理性、実現可能性について専門家の評価を受けることが義務付けられました。現時点で評価を行える専門家には、
- 中小企業診断士
- 公認会計士
- 税理士
が含まれます。
経過措置
| 状況 | 基準 |
|---|---|
| 施行日前に経営管理ビザの取得、更新申請、経営管理ビザへの変更申請をした場合 | 改正前の許可基準を適用 |
| 施行日前から経営管理等で在留中であり、令和10年10月16日(猶予期間3年)までに更新申請をする場合 | 改正後基準に適合しなくても、経営状況や改正後の基準に適合する見込み等を踏まえ、許否判断。 |
| 施行日前から経営管理等で在留中であり、令和10年10月16日(猶予期間3年)経過後に更新申請をする場合 |
改正後基準を適用。
但し、基準に適合しなくても、経営状況良好、法人税等納付義務を適切に履行、次回更新申請時までに新基準を満たす見込みがあるときは、その他の在留状況を総合的に考慮し、許否判断。 |
| 「高度専門職1号ハ」(経営管理)の場合 | 「経営・管理」の許可基準を満たすことが前提のため、上記と同様 |
まとめ
経営管理ビザは、会社設立や資本金の投入、事業所の確保、許認可の取得など、準備すべきステップが多く、取得が難しいビザとして知られています。
今回の改正により、要件がさらに厳しくなったため、ビザ取得のハードルは以前より高くなっています。今後は、申請時の注意点も変わってくるため、十分な準備が必要です。
また、改正に伴い、今後は申請事例が蓄積されることで、新たな実務上の注意点も明らかになってくることが予想されます。
経営管理ビザの取得や更新に不安がある方は、まず専門家に相談することをおすすめします。
