退職後の就労ビザについて
外国人が会社を辞めたときの手続きと注意点
外国人が日本で働くためには、在留資格(いわゆる就労ビザ)が必要です。そして、就労ビザの申請には日本の会社からの「内定」または「雇用契約」が前提となります。では、勤務していた会社を退職した場合、その就労ビザはどうなるのでしょうか?
退職しても就労ビザはすぐには失効しない
結論から言えば、退職をしたからといって、就労ビザが即時に取り消されるわけではありません。
ただし、本来「就労ビザ」は働くことを前提にした在留資格です。そのため、退職後に3か月以上まったく就職活動を行わなかった場合、在留資格の取り消し対象となる可能性があります。
退職後に外国人本人が行うべき手続き
外国人が退職した場合、「入国管理局への届出」と「再就職活動」が義務付けられています。また、失業保険の受給に関しても注意が必要です。
① 入国管理局への届出(契約機関に関する届出)
退職後14日以内に、会社との契約が終了した旨を入国管理局に届け出る必要があります。届出方法は以下の3通りです。
- インターネット提出(出入国在留管理庁電子届出システム)
- 窓口での提出
- 郵送による提出(届出参考様式1の4を使用)
届出を怠った場合は「20万円以下の罰金」、虚偽の届出をした場合は「1年以下の懲役または20万円以下の罰金」が科される可能性があります。また、今後のビザ更新時に不利に働くおそれもあるため、忘れずに手続きを行いましょう。
② 3か月以内の就職活動
退職から3か月間は、就労ビザの取り消し対象になりませんが、この間に就職活動を行わなければ取り消しの可能性が高まります。
再就職先が決まらない場合でも、具体的な就職活動を行っていることが確認できれば「正当な理由」があると判断され、在留資格が維持されるケースもあります。
③ 失業保険を受け取る場合の注意点
雇用保険に12か月以上加入していれば、退職した外国人も失業保険(基本手当)を受け取ることができます。ただし、受給中に在留期間が満了する場合は注意が必要です。失業状態では就労ビザを更新できないため、継続して受給するには「短期滞在」または「特定活動」への在留資格変更が必要になります。変更の可否は入国管理局の判断となります。
退職後に会社側が行うべき手続き
外国人社員が退職した場合、会社側にも必要な手続きがあります。基本的な流れは日本人社員の退職とほぼ同じです。
- 雇用保険被保険者資格喪失届
- 社会保険資格喪失届
- 源泉徴収票・離職票の交付
- 健康保険証・貸与品の回収
これに加えて、外国人社員特有の対応として「退職証明書の交付」と「外国人雇用状況届」の提出が必要です。
① 退職証明書の交付
退職者本人から請求があった場合、会社は「退職証明書」を交付しなければなりません(労働基準法第22条)。
記載内容は「使用期間」「業務の種類」「地位」「賃金」「退職理由」などですが、本人が希望しない事項を記入してはいけません。
② ハローワークへの届出(外国人雇用状況届)
退職した外国人社員については、ハローワークへ「外国人雇用状況届」を提出する必要があります。
雇用保険被保険者の場合は「資格喪失届」と同時に提出し、被保険者でない場合は退職日の属する月の翌月末日までに提出します。
2020年3月以降は「在留カード番号」の記載も必須です。
届出を怠ると30万円以下の罰金が科される場合があるため、注意が必要です。
外国人に対する説明とサポート
法的義務ではありませんが、退職時には「契約機関に関する届出」「失業保険」「脱退一時金」「住民税や国民健康保険」などの制度について説明することが望ましいです。特に日本の制度に不慣れな外国人にとっては複雑で理解しづらい点が多いため、会社として丁寧なサポートを心がけましょう。
よくある質問(Q&A)
Q1. 退職後に一時帰国は必要ですか?
退職後すぐに帰国する必要はありません。日本で引き続き働く意思があり、就職活動をしている場合は、在留期間内であれば滞在が可能です。
Q2. 3か月以内に再就職しなければなりませんか?
3か月以内に就職できなくても、就職活動を継続していれば「正当な理由」があると判断される場合があります。
入管庁のQ&Aでは、具体的に「会社訪問などの就職活動を行っている場合」は取り消しの対象外とされています。
Q3. 退職中にアルバイトはできますか?
原則として、退職中に別のアルバイトをすることはできません。就労ビザの範囲外の仕事を行うと「資格外活動」にあたり、違反となります。
会社都合の退職など、特別な事情がある場合のみ、資格外活動許可が認められる可能性があります。
Q4. 再就職が決まった場合の手続きは?
新しい勤務先が決まったら、入国管理局へ再度「契約機関に関する届出」を行います。
手続方法は退職時と同様で、電子届出システムまたは書面で提出します。
Q5. 帰国した場合、保険料は戻ってきますか?
退職して帰国する外国人は、一定の条件を満たす場合、「脱退一時金」を請求できます。
請求条件は以下のとおりです。
- 厚生年金の加入期間が6か月以上
- 日本国籍を有しない
- 老齢年金の受給資格がない
- 帰国後2年以内の申請である
まとめ
外国人が退職した場合、本人にも会社にも多くの届出義務があります。
特に「入管への届出」や「就職活動の継続」を怠ると、就労ビザの取り消しや更新拒否につながるおそれがあります。
適切な手続きを行い、スムーズに再就職・在留を継続できるよう注意しましょう。
退職後のビザの扱いや、再就職に向けた手続きでお困りの方は、当事務所にご相談ください。
当事務所では、就労ビザの変更・更新・転職手続きなどについて、無料相談を受け付けております。
