日本人と結婚して日本で暮らす方のための永住権ガイド
配偶者ビザをお持ちの方が永住権を取得するために必要な情報を、専門家の視点でわかりやすく整理しました。
1. 永住権とは — 配偶者ビザ・帰化との違い
永住権(永住者)は、元の国籍を維持したまま日本に無期限で住める在留資格です。配偶者ビザは結婚関係に依存し、定期的な更新が必要です。帰化は日本国籍を取得する制度で、原則として元の国籍を放棄します。
| 項目 | 永住者 | 日本人の配偶者等 | 帰化 |
|---|---|---|---|
| 国籍 | 維持 | 維持 | 日本国籍へ変更 |
| 在留期間更新 | 不要 | 必要 | 不要 |
| 活動の自由 | 制限なし | 制限あり | 日本人と同様 |
| 離婚・死別の影響 | 影響なし | 在留資格を失う可能性 | 影響なし |
| 参政権 | なし | なし | あり |
ポイント:永住権は「ビザ更新の手間」や「離婚・死別時の不安」から解放される反面、取得・維持には公的義務の適切な履行が求められます。
2. 日本人配偶者だけの特別ルール
永住許可には次の3つの基本条件があります。
- 素行が善良であること
- 独立の生計を営むに足りる資産・技能(世帯収入で判断)
- 永住が日本の利益に合致すること(国益適合)
通常は「原則10年以上在留、うち5年以上は就労等」が求められますが、日本人の配偶者の場合は例外があります。
婚姻が実体を伴って3年以上継続していること、かつ、日本で1年以上継続して在留していること
「実体を伴った婚姻」とは、単に戸籍上の結婚ではなく、同居・経済的扶助・共同生活の実態があるかどうかを指します。
また、申請時に持つ在留期間は原則3年または5年であることが求められます。
1年しかない場合は、まず在留期間更新を行ってください。
3. 審査の最重要ポイント:収入と公的義務
審査で不許可になりやすいのは「収入の安定性」と「税金・年金などの公的義務の履行」です。
収入(独立生計要件)
配偶者の場合、世帯年収で判断されます。目安として次のラインが実務で使われます。
| 扶養家族人数(夫婦含む) | 年収の目安 |
|---|---|
| 夫婦のみ | 約300万円以上 |
| 夫婦+子1人 | 約360万円以上 |
| 夫婦+子2人 | 約420万円以上 |
重要なのは直近3年間の収入の安定性です。
一年だけ高い収入があっても、過去3年に大きな落ち込みがあると不利になります。
公的義務の履行
特に次の3点が厳しくチェックされます(直近3年分が対象)。
- 住民税(納付期限を守っているか)
- 年金(国民年金・厚生年金)
- 健康保険料
過去に納期限を超えて支払った記録があるだけで不許可ケースがあります。納期限どおりの支払いができているかを必ず確認してください。
4. 見落としがちなその他の注意点
素行善良要件
刑罰の有無だけでなく、交通違反の多発、入管への各種届出の怠りなど、日常の行動も評価されます。
出国日数
「1年以上継続して在留」要件に関連します。次のケースは要注意です。
- 1回の出国が90日以上 → 在留期間がリセットされる可能性
- 年間の合計出国日数が100日以上 → 日本に定着していないと判断される可能性
5. 申請の流れと必要書類(簡易チェックリスト)
STEP1:セルフチェック
出入国在留管理庁の「永住許可申請セルフチェックシート」を事前に確認してください。1つでも該当しない項目があれば申請は危険です。
STEP2:必要書類(主なもの)
- 永住許可申請書・写真
- 配偶者(日本人)の戸籍謄本
- 世帯全員の住民票(マイナンバー不要)
- 在職証明書(会社員)/確定申告書の写し(自営業)
- 直近3年分の住民税課税(または非課税)証明書・納税証明書
- 直近3年分の年金・健康保険の納付状況を示す書類
- 身元保証書・保証人の所得証明・住民票
STEP3:理由書の作成
あなたの言葉で「なぜ永住したいか」を伝える重要書類です。次の要素を入れてA4で1〜2枚程度にまとめましょう。
- 来日から現在までの経緯(出会い〜結婚の経緯)
- 現在の生活状況(同居・仕事・地域活動など)
- 永住を希望する理由と今後の抱負
- 結びの誓い(法令遵守など)
STEP4:申請と審査
申請から結果まで6か月〜1年以上かかることがあります。審査中も在留資格を有効に保つため、必要があれば在留期間更新を行ってください。
6. 理由書作成のポイント(簡易テンプレ)
理由書は誠実に、かつ具体的に書くことが大切です。以下は構成の例です。
- はじめに:自己紹介(氏名・在留資格・来日年)
- 来日から結婚までの経緯(出会い・結婚年月)
- 現在の生活(同居状況・職業・地域活動)
- 永住を希望する理由(家族、仕事、地域貢献など)
- 結び:法令遵守と日本社会への貢献の誓い
注意:主観的な理由(「更新が面倒」など)だけでなく、地域や仕事を通じた貢献の姿勢を示すと説得力が増します。
7. 取得後の安心と注意点(令和6年の法改正)
永住権取得後も、次の義務を継続して守る必要があります。
- 税金・年金・健康保険料を期限内に納付すること
- 在留カードの管理と必要な手続き
- 長期間(原則1年以上)日本を離れる場合は注意
2024年の法改正により、永住者でも重大な法令違反や故意の公的義務不履行があれば在留資格が取り消される可能性があります。取得後も責任ある生活が求められます。
まとめ
永住権は日本で長く安定した生活を送りたい方にとって強力な選択肢です。特に日本人配偶者は居住年数の特例が使えるため、他の在留資格より取得しやすい場合があります。ただし、収入の安定性、税・年金・保険の納付、善良な素行が重要である点は変わりません。
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