【2027年施行】永住権は取り消される?税金滞納との関係や改正入管法を行政書士がわかりやすく解説【3/3】
取消事由に該当したらどうなる?調査から処分までの流れ
「取消事由に該当したら、すぐに永住権が取り消されて強制送還されるのでは?」
そのような不安を抱えている方もいるかもしれません。
しかし、実際には取消事由に該当したからといって、直ちに在留資格が取り消されたり、退去を命じられたりするわけではありません。
入管庁によると、手続は概ね次のような流れで進められます。
- 事実関係の調査
- 本人または代理人に対する意見聴取
- 取消事由に該当するかどうかの判断
- 処分の決定
ここで重要なのは、処分には次の2つがあるという点です。
・在留資格「永住者」を取り消す
・永住者以外の在留資格(主に「定住者」など)へ職権で変更する
この2つは連続した処分ではなく、いずれか一方が選択されます。
入管庁は、今後も日本で在留を認めることが相当であると判断される場合には、「定住者」などへの職権変更を行うことを想定しています。
例えば、公租公課を滞納していたものの、その後納付を済ませ、今後は適切に納付する意思が認められるようなケースでは、個別事情が考慮される可能性があります。
一方で、今後も公的義務を履行する意思が認められないなど、日本での在留が適当ではないと判断された場合には、永住権が取り消されることがあります。
永住権が取り消された場合はどうなる?
実際に永住権が取り消された場合は、原則として30日を超えない範囲で出国準備期間が指定されます。
この期間内に自ら出国することが求められます。
指定された期間内に出国しない場合は、退去強制の対象となる可能性があります。
また、処分に納得できない場合は、取消訴訟などの法的手続を利用することもできます。
なお、このような行政処分への対応や訴訟手続は弁護士の業務となります。
実際に処分を受けた場合には、できるだけ早い段階で弁護士へ相談することをおすすめします。
「定住者」に変更された後でも永住申請はできる?
はい、可能です。
入管庁は、「定住者」などへ変更された場合でも、その後、公的義務を適切に履行していることなどが確認できれば、改めて永住許可を申請することは可能と説明しています。
つまり、一度変更された場合でも、将来的に永住資格を再取得できる可能性は残されています。
取り消しの対象にならないケース
制度改正で最も多い誤解は、
「税金を払えなかったら必ず永住権を失う」
というものです。
しかし、入管庁はそのような運用は想定していません。
例えば、
- 病気
- 失業
- 災害
- その他本人の責任とはいえない事情
により、やむを得ず税金や社会保険料を納付できなかった場合については、取消しの対象とは想定していないと説明しています。
さらに、実際に処分を判断する際には、
- 未納に至った経緯
- 督促への対応状況
- その後納付したかどうか
- 現在の生活状況
なども総合的に考慮されます。
また、改正法の附則では、公租公課の不払いを理由に判断する際には、
- これまでの納付状況
- 現在の生活状況
- 日本での生活実態
などに十分配慮することが明記されています。
つまり、形式的に未納があるという理由だけで機械的に取消しが行われる制度ではありません。
家族の在留資格への影響
家族への影響を心配される方も多いでしょう。
入管庁によると、取消しや職権変更の対象となるのは、取消事由に該当した本人のみです。
例えば、
- お子様が「永住者」である場合
- 配偶者が「永住者」である場合
これらの在留資格には、本人の取消しだけを理由として影響はありません。
一方で、配偶者が「永住者の配偶者等」の在留資格で在留している場合には、そのままの在留資格では在留できなくなるため、「定住者」などへの変更が必要となります。
永住者が今からできる備え
制度の施行日は2027年4月1日です。
現時点で過度に心配する必要はありませんが、施行までに次の点を確認しておくと安心です。
✅ 住民税・所得税を期限どおり納付しているか
✅ 国民健康保険料・年金保険料に未納がないか
✅ 在留カードの更新や住所変更などの届出を適切に行っているか
もし未納がある場合は、できるだけ早く納付しましょう。
すぐに納付が難しい場合でも、そのまま放置するのではなく、市区町村や年金事務所へ相談することが大切です。
分割納付などの制度を利用できる場合もあります。
入管庁も、支払について相談したことだけを理由に、不利益な取扱いを受けることは想定していないと説明しています。
「相談すること」ではなく、「何もしないまま放置すること」の方が問題となり得ます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 税金を一度払い忘れただけで永住権は取り消されますか?
いいえ。
法律上は「故意に支払わないこと」が要件です。
一度の払い忘れや、一時的な納付遅延だけで直ちに取消しとなるものではありません。
Q2. 永住権が取り消されたら必ず帰国しなければなりませんか?
必ずしもそうではありません。
まずは事実関係の調査や意見聴取が行われ、多くの場合は「定住者」などへの職権変更も検討されます。
Q3. 施行前の未納も対象になりますか?
現時点では、入管庁から明確な運用方針は公表されていません。
ただし、未納がある場合は、施行を待たず早めに解消しておくことをおすすめします。
Q4. 帰化した場合も対象になりますか?
いいえ。
帰化して日本国籍を取得した場合は、在留資格制度そのものの対象外となります。
ただし、帰化には別途要件や審査があります。
Q5. 通知が届いたらどうすればよいですか?
意見を述べたり証拠を提出したりする機会があります。
期限が設けられる場合もあるため、早めに行政書士や弁護士へ相談することをおすすめします。
まとめ
今回の改正では、永住権の取消制度そのものが新設されたわけではなく、取消事由が追加されるとともに、職権による在留資格変更制度が新たに設けられました。
今回のポイントを整理すると、次のとおりです。
- 2027年4月1日から新たな取消事由が施行される
- 故意の公租公課の不払い、入管法上の義務違反、一定の重大犯罪が対象となる
- 一度の納付遅延や、病気・失業などやむを得ない事情は対象として想定されていない
- 取消事由に該当しても、直ちに退去強制となるわけではなく、個別事情を踏まえて慎重に判断される
- 家族であることだけを理由に、家族の在留資格が取り消されることはない
- 今からできる備えとして、公租公課の納付状況を確認し、未納があれば早めに対応することが大切
制度改正については、不正確な情報がSNSなどで拡散されることもあります。
大切なのは、断片的な情報に振り回されるのではなく、入管庁の公表資料など信頼できる情報をもとに、制度を正しく理解することです。
在留資格について不安がある場合や、ご自身のケースが制度の対象となるか判断に迷う場合は、専門家へ相談することをおすすめします。
